英会話ができるようになりたいけど海外留学は難しい。一人で勉強するにもどうしたら良いか分からない。そんなふうに考えている方も多いはずです。しかし、たとえ海外留学しても英語が話せないまま帰国する人もいれば、独学で英語のプロになる人もいます。大事なのは正しい方法で勉強することです。
今回は、予備校講師としてカリスマ的存在となっている安河内哲也氏の著書『完全保存版 できる人の英語勉強法』から、安河内氏が勧める英会話の勉強法を紹介します。
安河内哲也の英語力
はじめに安河内氏の英語スピーキング動画を見てみます。安河内氏は TOEIC テストおよび TOEIC SW テストで満点を取得している他、英検1級、国連英検特A級、通訳案内士などのハイレベルな英語系資格を各種取得しています。
ご覧の通りネイティブ並の完璧な発音というわけではありませんが、十分にコミュニケーションができる英語力です。安河内氏は著書『完全保存版 できる人の英語勉強法』の中で、単語暗記法からリーディング、リスニング、スピーキング、ライティングなど一通りの勉強法を説明していますが、今回は特に英語スピーキングを伸ばす勉強法に注目します。
ネイティブのような完ぺきを目指さない
標準米語は少数派
多くの日本人が理想としているネイティブ英語はアメリカ英語、特に「標準米語」でしょう。この標準米語を話す人は、世界中で英語を話す人のうちのわずか数パーセントにすぎません。そして英語を話す人の大部分は、日本人と同じノンネイティブです。ノンネイティブの人たちは、発音が完ぺきではなく、難しい単語も使わず、文法を間違うことがあっても、他の英語話者と十分にコミュニケーションを取っています。
完ぺきじゃなくていい
日本人にとって英語はあくまで「外国語」です。そのため、英語で微妙なニュアンスを伝えようと頑張っても無理があります。ふつうの日本人が何年か勉強したぐらいでネイティブ並の英語が話せるはずありません。
日本人が目指すべき英語はネイティブ並の高度な言い回しではなく、「確実に通じる英語」なのです。ネイティブのように完ぺきな英語を話さなければならないと考える必要はありません。
私なんて、20年以上も英語を専門的に勉強し、英語で仕事をしたり、英語の小説を書いたり、試験でも高い点数を取ったりしていますが、それでもネイティブのような完ぺきな英語を話すことはできません。
音読を英語学習の中心に据える
音読で反射力と動作力を磨く
英語は知識を増やすだけでは使えるようになりません。実際の会話で英語が使えるようになるには、「反射力」と「動作力」が必要です。英語で質問をされたときに、頭の中でどういう文章を作ればいいんだろうと考える暇はありません。頭にストックしている知識を素早く呼び出す反射力と、それを言葉として発する動作力が必要になります。
それでは反射力と動作力を増やすにはどうすれば良いか。それは、繰り返し練習するしかありません。特に「音読」を英語学習の中心に据えます。ただ英語を読むのではなく、ネイティブの音声を聞いた後に繰り返し音読する「リピーティング」、音声を聞きながら一緒に音読する「オーバーラッピング」、音声から少し遅れて音読する「シャドーイング」などを重視します。
このような音読中心の練習を行うことで、英語の反射力や動作力が鍛えられます。
実際、英語の達人たちに話を聞くと、多くの人々が「『音読』を学習の中心に据えた」と答えます。私自身も音読に出会って英語の力が驚くほどアップしたという経験の持ち主です。音読を徹底的に行ったことで、さまざまな英語の試験に合格することができ、TOEICやTOEFLのスコアを大幅に上げることができました。また、英語でプレゼンする能力や英会話の力も、格段にアップしました。
最強のツール「英文法」
言葉のルールを短期間で身に付ける
子供なら英語に毎日どっぷり浸かっていれば自然と話せるようになりますが、それでも英語漬けの生活を何年も続けなければなりません。大人が自然に英語を身に付けようとしたら、さらに長期間の英語漬け生活が必要です。3年以上アメリカに住んでいても、ちゃんと英語を話せない人はたくさんいます。大人になってから英語を覚えるには、言葉のルールである英文法を勉強しなければなりません。英文法は英語を短期間で習得するための「最強のツール」なのです。
中学〜高校1年生レベルの英文法を勉強する
初歩的な英語を実用的に使うためには、中学〜高校1年生レベルの英文法を習得しておけば十分です。そのレベルの英文法はとても汎用性が高く、逆に大学受験レベルのものはマニアックな内容も含まれています。あまり難しいことを覚えると、正しい文法で話さなければいけないというプレッシャーになってしまい逆効果です。まずは基本的な英文法を勉強すれば良いのです。
英文法の知識がある程度身についたら、例文を100回繰り返し音読して体にしみこませます。さらに例文の暗唱をし、例文のパーツを入れ替える「パターンプラクティス」などの練習をします。パターンプラクティスとは、例文の単語を入れ替えたり、疑問刑や否定形に変えて練習する方法です。
シンプルパターンで話す
単純な「型」を条件反射的に使えるように
各国から集まった人たちが英語で話すときは、分かりやすい単語やフレーズが使われているため簡単で明瞭、凝った表現も使われません。日本人が英語スピーキング力を伸ばすにはシンプルパターン、つまり高校1年生くらいまでに習った英語の『型』を使いこなすことが重要です。
単純な「型」を条件反射的に使えるようにし、そこに多くの表現や単語を組み込んでいくことによって、自分の意思を表現していきます。
たとえば、<I'd like to + 原形動詞> というパターン。「原形動詞」以降の部分に、"make a call" "have a drink" "see a doctor" "study English" "meet a friend" など、状況に応じて単語、熟語を入れ替えていくわけです。
このようなシンプルパターンでは微妙なニュアンスが伝えられないと不安に感じるかもしれませんが、最初から難しいことをしようとするのではなく、一番伝えたいことが伝われば十分と考えます。
100〜200のシンプルパターンをストック
シンプルパターンを増やすには、中学〜高校1年生までの文法を勉強をします。この範囲の勉強をすれば100〜200程度のパターンがストックでき、「とりあえず英語が話せる」レベルになるでしょう。参考書は難しいものではなく初級者向けのもので大丈夫です。
source: 完全保存版 できる人の英語勉強法
例文を繰り返し音読
英文法の問題集や参考書を一通り勉強するだけで終わりではありません。勉強して理解したら、例文や解答文を何十回と音読し、すぐに口から出てくるまで暗唱します。ここで言葉を入れ替える「パターンプラクティス」と「文型を変えるプラクティス」を取り入れると効果的です。
繰り返し練習をするうちに、シンプルパターンが条件反射のように口から出てくるようになります。また、言葉を入れ替える練習がスピーキングの良い練習になります。文型を入れ替える練習では、疑問刑や否定形、過去形などに変えていきます。
覚えたシンプルパターンをどんどん使う
100程度のシンプルパターンを覚えたら、それをどんどん使っていくことで英語が話せるようになってきます。必ずしも誰かと話す必要はなく、独り言でもかまいません。文法を間違っても大丈夫、使いながら直していけば良いのです。
スピーキングの現場では、「伝わる」のが第一で、「正しい文法」は第二です。
間違えて当然と考える
間違いを恐れない
日本人の英語スピーキングが伸びない原因として、間違えると恥ずかしいという心理的な問題があります。これをクリアしなければスピーキングは上達しません。
そもそも母語である日本語でも間違うことがよくあります。日本人にとって英語は外国語なのだから、間違って当然と開き直るぐらいで丁度良いのです。間違うことを恐れていては英語が話せるようになりません。
他人の英語を論評しない
間違いを恐れる原因の一つに、まわりの目を気にしすぎるという問題があります。恥をかきたくないという心理から、人前で英語を話すことに抵抗が生まれます。
まわりの目から脱却するには、まず自分自身が人の英語を論評するのをやめることです。誰かの英語を論評すると、自分も論評されていると思ってしまいます。この負の連鎖を断ち切るためにも、人の英語を論評したり、間違いを批判したりするのはやめるべきです。